日本流通史 小売の近現代(1)

書籍

著 満園勇

スマレジのオンライン相談・ショールーム予約はこちら

明治時代の流通

明治時代以降による小売業態の歴史展開に注目しながら流通・商業の現状や理論を学ぶ方法や商店街や・まちづくりに関心を寄せる方にも必読。
本書は、大学の講義用テキストとして使われることを念頭に書かれているので、データーに基づいた客観性があります。また時系列的でありつつも業態ごとにわかりやすくまとめてあります。

3つの前提(現代流通史を理解する)

1流通業は卸売業と小売業に大別される 
 小売業—消費者に物を販売する  
 卸売業–ー消費者以外の事業者にモノを販売する(どちらも対象は、有形なものの販売)

2消費者の欲求は多様であるため一つの小売業態がそうした多様な要求の全てを満たすことはない。
 小売ミックス—品揃え、価格、広告、接客、売場、立地、営業時間を組み合す。
 小売業態 —- 上記の組み合わせにより他と明確に区別されること(百貨店、スーパー、コンビニ)

3日本流通業は卸売業の「多段階」性と小売業の「零細過多」が特徴である
 一つのモノが1次卸、2次卸と複数の卸売業者の手を経ている
 小さな商店の小売業者がたくさんある

上記の前提の2については、職業柄実感しています。
消費者の欲求は、多様で移り気だと思います。また社会制度の変革や決済方法も流通の前提ではないかと思います。

江戸から明治にかけて社会構造が変わり、明治初期の有業人口7割の農業従事者が、工業化と都市化の進展により1930年には、第一次産業の従事者が5割を切るようになりました。
社会構造が、変わると人流がかわり住むところや職業が大きく変わったみたいですね。
小売業に関しては、百貨店ができ大型店舗が登場ますが1939年の臨時国勢調査から小売業の事業者が「小売店」「百貨店」「露店行商」に区分けされているところを見ると明治になって一気に行商から常設店舗にシフトしたわけではないことがわかります。

百貨店について

1905年 全国主要新聞紙上掲載 三越のデパートメントストア宣言
「当店販売の商品は今後一層その種類を増加し、凡そ衣服服飾に関する品目は、一棟の下にて御用弁 相成候様設備致し……..。」
上記が日本の百貨店の始まりになります。

1、ワンストップショッピングの利便性の提供
2、部門別管理の導入
3、多様なサービスの提供

上記を特徴としています。その後問題になってくる卸売業との関係や女性店員が多い理由等が店舗の急拡大よることが要因だとわかります。また百貨店の系譜についても解説があり(大都市呉服店、電鉄系、地方都市系)現代までの流を掴むことができます。
1937年第一次百貨店法制定に関しては、大型店と中小店の事業機会を調整する枠組みなのですが、行商がまだまだあった時代に百貨店との規模の格差が問題になり反百貨店運動になどが起こり社会的要請を受けてのことがわかります。

第一次百貨店法
1、規制対象 売場面積6大都市 3,000m2以上 その他1500m2以上
2、許可制 主務大臣(商工大臣)の許可制
3、閉店時刻、休業日の統制
4、百貨店組合の成立

通信販売について

店舗を持たず小売販売を行う無店舗販売の一種
19世紀後半から20世紀初頭のアメリカで発展、モンゴメリー・ウォードとシアーズ・ローバックが2大通販会社 農村に向けてのカタログ通販で売り上げを上げるが、1920年代半ばから都市化と乗用車の普及が進みチェーンストアによる店舗が地方都市に展開、アメリカの通販市場は急速な縮小をむかえます。
日本においては、車の代わりに郵便で 1892年に小包郵便、1896年に代金引換郵便、1906年郵便為替が始まったことにより通信販売が勃興していきます。興味深いのは、「主婦之友」が通販事業をしていたこととその事業が百貨店通販に匹敵する規模だったことです。

チエーンストアについて

仕入れ(本部)販売(店舗)が統一的に管理運営されている。チエーンストアの要諦は「仕入れと販売の分離と統一」
1850年イギリスにて新聞雑誌の売店としてW.H スミスやミシン販売のシンガーなどが登場
日本では高島屋均一店チェーンが百貨店の高島屋の別業態として運営。1938年別会社を新設して百貨店法の適用外に多店舗出店が可能になりました。

流通系列化について

洋風の新しい消費財には、その製品の魅力を消費者にアピールするためや修理点検が必要になる製品があるためメーカが販売店を系列化しました。
資生堂、味の素、等参考事例にて説明がありメーカーショップの成り立ちがわかります。後にチエーンストアとの確執が生まれるのですが、メーカーには、市場を生み育てたという自負があったのではないかと思います。

歴史的な経緯を辿ると現状がよく見えてきます。通信販売については今のECに通じるところもあり、今はまだEC市場は拡大してますが、社会的な変革により大きく変化するように思います。
アメリカにて通信販売が停滞した理由は、カタログ販売でモノが届くことよりも自身が車移動でショッピングする方が革新的だったからではないかと思います。
何が革新的な出来事かは、時代によって違いますが今後も社会(技術)変革により新しい流通が生まれてくると思います。

日本流通史
日本流通史(2)

コメント

タイトルとURLをコピーしました