独裁者のデザイン

書籍

松田行正 著
ヒットラー・ナチスのデザイン『RED』有色人種の差別を扱った『HAET!』に続く独裁者のデザインに関した三部作完結

独裁者のポスターデザイン
2019年発刊ですが、急遽2022年に文庫化緊急出版引用リストまで入れると397ページあり文庫としてはかなりボリュームがあります。
装丁にも工夫があって小口を左に少し曲げるとヒットラー、右に曲げるとスターリンの顔が印刷されていて、本を広げている時には必ず、ヒットラーとスターリンの視線を感じなければ読み進められない。
帯には「独裁者はあなたの隣にいる」と書かれてあり、著者、編者の仕掛けが本書の内容と呼応しています。
テレビやインターネットがなかった時代のプロパガンダは、ポスターかラジオになります。
特にポスターが果たした役割は大きかったと思われます。
市民に強く訴えようとすると本書の中で解説されている眼が重要になるようです。
ヒットラーもムッソリーニ、スターリン、毛沢東も 同じような手法でデザインしていることが解説されています。

  • こちらに向かって話しかけてくる視線は、市民への何かの要求であり、
  • 凝線と指差し、圧迫や脅迫観念の押し付け
  • 遠くを見つめる眼差しは、理想的(?)な未来を示している。


また、歴史的な背景や絵画からの解説などデザインの周辺にかなりの紙面が割かれています。
途中、日本の話も少し触れられていて、日本の対外プロパガンダ誌『NIPPON』亀倉雄策氏や『FRONTO』のこぼれ話(共産主義者の巣窟だった話)大変興味深い内容が書かれています。
中国についても政治的背景を含め書かれています。
私が本書の中で一番印象に残ったのは、ルートヴィヒ・ホールヴィン
ナチのリクルートポスターのデザイナー、戦争に似つかわしくない明るい笑顔の女性を描いていたため。戦後 ナチ党員だったにも関わらず訴追されなかった話です。
作風がリアルにその後の人生を変えるのは、興味深いです。 

著者があとがきにてロシア・ウクラウイナ戦争への思いを少し述べています。
独裁者は嘘をつくそして、プロパガンは『繰り返し繰り返し』流されると



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